2016年6月定例会 本会議質問と当局答弁 山内涼成議員の質問と答弁(30分)
2016年6月14日(火)
山内涼成議員の質問と答弁(30分)
日本共産党の山内涼成です。私は会派を代表して一般質問を行います。
小学6年と中学3年を対象にした文部科学省の全国学力テストが4月19日に行われました。地震の影響で熊本の全小・中学校と宮崎県の一部中学校については中止を決定しましたが、その他の国公立のほぼ全てと私立の約5割、計3万校弱に約215万人分の問題を配送しました。
学力テストは国語と算数・数学の2教科で、いずれも「知識」を問うA問題と「活用力」を試すB問題に分かれて実施され、学習意欲や生活習慣などのアンケート調査も行います。
文科省が8月下旬をめどに、都道府県別の調査結果を公表する予定となっており、2年前から市町村教育委員会などの判断で、学校ごとの結果も公表できるようにされ、点数競争に拍車をかけています。
学力テストが再び全員調査になって4年、県や市の一斉テストも拡大され、子どもたちはテスト漬けの日常を送っています。そもそも測られるのは真の「学力」か、問題は適切な内容か、検証されないまま「結果」のみが独り歩きし権威づけられています。
いったいなぜ、今、全国学力テストが復活し、そして学校別の結果公表をして過度な競争をあおる道へ再び戻っているのでしょうか。朝日新聞が「学力調査、競争なき競争入札」という記事を書いています。記事によると、全国学力テストの採点などを業者に委託するための一般競争入札で、「1社入札」が続いています。特に小学6年分は、入札を導入した2008年度以降すべてベネッセコーポレーションが、落札。落札率も99%を超えることが多く高コストにつながっている。としています。
本市では昨年度、全国学力テストと合わせて継続的に調査することで一人一人の弱点を把握し、教員の指導に役立てるとして、市内の小学5年と中学1・2年の全児童・生徒を対象にした独自の学力テストを実施しました。この独自テストを受託したのはベネッセコーポレーションです。しかも、独自テストを行ったのは1月で、4月から全国学力テストの対象となる6年生に進学する児童・生徒です。これは、全国学力テストのためのテストと言わざるを得ません。見解を伺います。・・・・①
点数競争は特に下位の自治体で激化し、沖縄では学校行事すら削減するすさまじいテスト対策が行われました。最近さらに、秋田、福井などを「先進県」としてもてはやし、モデルとする県が増えています。例えば国語が最下位だった県は、わざわざ福井の退職した校長を「教育企画監」として招聘し、その「学力向上」施策を取り入れました。しかし、中身は全国の学校で拡大する、授業方法を型どおりにマニュアル化する「スタンダード」そのものです。教師の創意工夫や自由は奪われ、実は低学力の背景にある子どもの貧困も無視されます。文科省は、教育内容を意のままに操れるようになり、さらにテスト結果に基づいた教員評価や学校評価を導入すれば、容易に教育支配の道具になることが懸念されます。
本市が実施している授業力向上ステップアップ事業では、教育委員会が指定する小学校90校、中学校20校に学力向上推進教員が一人5校を回って授業力の向上に努めることになっていますが、学力テストの成績が悪い学校が指定され、指定された学校の教員がテストの結果で評価されることになれば学校運営は崩壊し、学校そのものが塾化することになりかねません。どのような基準で学校が選定され、学力向上推進教員は同じ教員に対して、どんな指導をするのでしょうか。答弁を求めます。・・・・②
関連するもう一つの問題は、学校で使われているテスト問題やドリルなどの教材の選定についてです。
現在、学校における教材の選定は各学校の教材選定委員会で議論され学校長の判断で業者が選定されていますが、この2~3年で地元教材業者への発注が激減しています。
全国学力テストも本市独自のテストもベネッセコーポレーションということになれば誰が考えても同じ業者のドリルや教材を使った方が有利と考えるのではないでしょうか。教材選定への影響について答弁を求めます。・・・③
次に、高齢者が安心して安全に生活できる街づくりについて、交通政策の観点から伺います。
ニュースなどで報道される高齢者の交通事故では、よく「アクセルとブレーキを踏み間違えた」というフレーズが出てきます。例えば、コンビニの駐車場などに駐車するときにブレーキだと思ってアクセルを目いっぱい踏み込んで暴走する踏み間違い事故は意外に多いものです。
パニックを起こさない状況にあっても、瞬間的に「今自分が踏み込んでいるペダルはアクセルなのか、ブレーキなのか」を判断できなくなってしまうことが、高齢者には多いようです。
また、判断ミスで起こる交通事故の一つには、「高速道路の逆走」があります。
時速80キロ以上で走行する車両が多い高速道路を逆走して、正面衝突を起こすために死傷事故につながるケースが多いのが特徴です。
国交省の調べでは、高速道路において発生する逆走事案の7割は高齢運転者によるものであることが明らかになっています。
どんなに気が若くて、「若い者には負けん」と思っている高齢者であっても若い世代に比べれば反応が遅れてくるのは当然のことです。
昨今、認知症対策が注目される中、高齢者の交通事故防止は急務です。徘徊する高齢者が事故に遭うのに加え、車を運転して事故を起こすケースも増えています。高齢者が被害者にも加害者にもなる事態が高齢化社会を迎え今後も増え続けることを危惧するものです。
国では、2018年には530万人を突破すると言われる75歳以上の免許保有者に対して3年ごとの免許更新時に認知機能の検査を義務付け、認知症と判断されれば免許の取り消しなど法整備を進めています。
また、自治体によっては免許証を返納することによって、公共交通の運賃軽減など様々な特典を付けて免許証の返納を促す政策も実施されています。
しかし、免許証返納を促す目的で特典を与えるやり方は、もともと免許証を持たない人からすれば公平感に欠けると思います。一方、公共交通網が充実している首都圏では有効であったとしても、1日1本しか公共交通がない地方の田舎などでは車のない生活は死活問題です。
マイカーに代る充実した公共交通の整備がされていないことが、高齢者が車を手放せない大きな要因となっていることは明らかです。
公共交通の充実は、市民や高齢者が安全に安心して北九州市に住み続けるために早急に取り組むべき課題です。
宮崎県宮崎市高岡地域では、路線空白地居住者や高齢者に対して詳細なアンケート調査を行い、ニーズを分析し、タクシー会社に補助金を出して生活のための足を確保しています。
本市は、幹線道路の公共交通はある程度整備されていますが、支線となる交通空白地を含む不採算路線の便数確保は交通事業者任せになっています。交通事業者に対して補助金を出し、幹線までのフィーダーバスやフィーダータクシーの実現に向け、まずはモデル地域を指定して住民の動向を調査してみてはいかがでしょうか。見解を伺います。・・・・④
私は、いずれ誰もが高齢化し、経験するであろう判断力の低下や物忘れ、反応の遅れなど自分自身で気づいたり、家族に指摘される時が来たら速やかに免許証を返納できる交通環境の整備と、車がなくても自由に移動できる公共交通の充実を図るべきと考えます。
山内涼成議員への答弁
(高齢者の交通政策)
本市では元気発信北九州プランに示すまちづくりの目標を実現するため、都市交通分野の取り組みを戦略的に推進する基本計画として北九州市環境首都総合交通戦略を平成20年12月に策定している。この戦略に基づく公共交通の確保・維持に関する取り組みとして、ICカード乗車券の導入やバス停整備による待合環境の改善、またおでかけ交通を実施する交通事業者への車両の購入や運行経費の補助、また低床バスの導入によるバリアフリー化などを積極的に推進しており、公共交通の利便性向上に取り組んでいる。
また高齢者モビリティーマネジメントの一部として、バス事業者やモノレールによる独自の割安乗車券やタクシー事業者による運賃割引制度などの周知によって、公共交通の利用促進に取り組み、高齢者が安全かつ安心して移動できる政策の展開に努めている。
その後平成26年11月に、地域公共交通活性化再生法が改正された。各自治体による地域公共交通網の形成計画の策定が制度化されたことから、本市においても計画の策定を行っているところだ。この計画では、地域の実情に応じたバスやタクシーのネットワークを維持・充実させていくため、その輸送サービスを適正に配置することとしている。とりわけ、郊外部については通院や買い物など、地域住民の日常生活を踏まえ、フィーダーバス路線などを導入することで、公共交通空白地の解消に努めることにしている。
今年度は、西鉄や交通局と連携して幹線と接続するフィーダーバス路線の可能性、あり方について検討することにしている。また需要が小さく路線バスでは運営が成り立たないと考えられる地域においては、既存のおでかけ交通や新たな地元タクシーを利用したデマンド交通(?)での対応について検討することにしている。
デマンド交通については、おでかけ交通と同様に地元の協力が不可欠なので、すでに二つの地区に対し意向の確認を行っている。
今後とも公共交通は高齢者をはじめ、市民の皆さんにとって安全かつ安心できるものとなるよう、引き続き市民、交通事業者、市などが一体となって地域公共交通網形成計画に掲げる政策の実現に向けて取り組んでいく。
(学力テストに伴う問題について)
まず北九州市学力状況調査が小学校5年生の場合1月、全国学力学習状況調査が6年の4月ということだ。それから同一の業者であるという点。
まず学力向上の取り組みの必要性だが、児童生徒の生きる力を構成する確かな学力を育むことは、児童生徒が将来の職業選択肢を拡げ、夢や希望に近づくために極めて重要だと考えている。特に変化が激しい社会の中で生きていくことになる今の児童生徒には、何を知っているか、何ができるかという個別の知識量だけではなく、それをどう使うかといった思考力、判断力などを身につけることが求められている。
全国学力学習状況調査では、こうした時代に求められる力を踏まえた問題が出題されているが、本市では小中学校とも全国平均正答率と比較すると低い位置で一進一退しているという厳しい状況があり、知識、技能の定着及びそれらを活用する力の両方で課題がみられるところだ。
学力向上の取り組みを総合的に推進するために、ことしの3月に策定した学力、体力向上アクションプランのなかで、北九州市学力状況調査は、検証・改善のものとして位置づけており、次のような活用を行うことにしている。
まず北九州学力状況調査だが、小学校5年生、中学校1年生、2年生で実施することで、全国学力学習状況調査が実施される小6、中3と結びつけて、小学校5年生から中学校3年までの経年変化を把握・分析し、児童生徒一人ひとりのきめ細かな指導に生かすこと、それから本市独自の学力状況調査の実施学年では、児童生徒の調査結果に応じた振り返りプリントが一人ひとりに配布される。1年間の学習におけるつまづきの解消と学力の定借を図るものだ。
市の学力状況調査を1月に実施した理由は、できる限りその年度の遅い時期に調査を設定することで、教員がそれまでの児童生徒の学習の評価を行い、各児童生徒の課題を克服したうえで次の学年に進学させるという趣旨で調査時期を設定しており、テストのためのテスという批判はあたらない。
今後とも21世紀を生きる子どもたちに必要な力を身につけられるよう、学力向上のアクションプランに基づき、学力向上に総合的に取り組んでいきたい。
次に授業力向上ステップアップ授業実施校の選定基準と、学力向上推進教員が同じ教員に対して行う指導方法の内容について。
本市の学校教育においては、児童生徒の生きる力に必要な確かな学力向上のみならず、教員の大量退職、大量採用の時代を迎え、教員の指導技術などの継承発展も喫緊の課題となっている。こうした状況を踏まえて、学力向上の取り組みを総合的に行う学校に対して、教員の指導力向上などの取り組みを支援するために今年度から指導力向上ステップアップ授業を行うこととした。
その内容は、まず小学校18名、中学校4名の授業力に定評があるマスター教員などを、学力向上推進教員として配置し、各教員に授業力向上のための助言を行うこと、それから思考力などに関わる問題を充実させる観点から、教育委員会が小学校の単元末テストや中学校の定期考査の改善を図ること、こういったことだ。
学力向上推進教員の助言は、いっせい画一的な授業ではなく、児童生徒が課題の発見や解決に向けて主体的、協同的に学ぶ授業となるよう、いわゆるアクティブラーニングの考え方に基づき、各教員の授業を参観したうえで行っている。
この取り組みは学校と共同で行っているものであり、学力向上推進教員が教員と一緒に授業づくりを行う中で、教員自らの創意工夫を引き出すものとなっている。
実施校の選定だが、ステップアップ授業の選定にあたっては、これまでの様々な学力向上施策を有機的に結びつけることが効果的であることから、子どもひまわり学習塾などに取り組んできたなど、学力向上に総合的に取り組む学校の中から、この授業を活用して教員の授業力向上や学力向上に取り組もうという学校を指定している。
どの学校も時代が求める確かな学力を児童生徒に身につけさせることや、大量退職、大量採用の時代の教員の指導力向上への対応を図ることが課題ととらえており、各学校の学力調査の結果とは全く関係がないものだ。
今後とも学力向上のためのアクションプランに基づき、教員の指導力向上、学力向上に総合的に取り組み、児童生徒がこれからの時代に生きるために必要な力を身につけられるよう取り組んでいく。
最後に、全国学力学習状況調査等を受託する特定の会社が学校における教材選定に与える影響、について。
ここでいう教材とは教科用図書以外の漢字ドリル、計算ドリルや資料集などだ。本市の各学校では教材選定委員会を組織して、教材の選定を行っている。選定においては前年度の教育活動の実績を踏まえ、教育委員会が示す教材選定基準に基づき選定を行っている。具体的な選定基準は、まず学習指導要領に示された各教科等の目標や内容などに照らして適切であるか、児童生徒の発達段階や適性などに照らして適当であるか、それから日々の教育活動を行うにあたって有効、適切にして必須なものであるか、さらに保護者に過剰な負担をかけていないか。コストの点だ。
選定の手順は、まず各学年の教諭がすべての教材を比較検討し、学年ごとに選定案を作成する。次に、校長、教頭、教務、学年代表事務職員などで構成する教材選定委員会において選定案を検討する。その後、管理職が業者の偏りや保護者の負担などを考慮し、調整し、最終的に市の小中学校管理規則に基づき校長の権限で決定する。
この結果だが、毎年変動がありますが、小学校全校で選定する教材の総数は今年度でいくと5000を超える。その5000以上に及ぶ教材のうち、全体を占める地元業者、約12社ほどことしはあったが、購入割合は85%を超えている。今後とも各学校での教材選定にあたっては、保護者に過重な負担をかけないなどの配慮をしながら、児童生徒の発達段階に即した適正な教材を厳正に選定するよう指導していく。
<第2質問以下の答弁>
(ベネッセが広く学校に浸透している点について)
まずICTサポーターだが、これはICTの維持管理、学校のサポートと教育上のソフトウエアあわせて入札を行っていて、これは別のメーカーがとっていて、その中でソフトウエアについてはベネッセが入っているということだ。
ICTサポーターというのは、今は各学校に月1回程度行くという状況なので、なにか常駐しているようなイメージだがそういうことではない。
差し替え等々について何のことかよくわからない。
■教育長
個別具体的な事例は全く承知していないのでまた別に機会に教えていただきたいが。そもそも地元の方も12社おられるが、ベネッセも含めて、日常的な営業活動はどこもされているわけだ。その中で地元の業者が結果的に8割、9割というのが今の実態だ。
そもそも教材の選定だが、ドリルや資料集、各学校において現場の教員が各学校ごとに集まって、これがいいだろうなど、まず現場の教員がスタートだ。各学校で議論していって最終的に校長の権限で決めるわけだが、その際の現場の声を聞いてみると、先生方の現場の声を最大限に尊重されているのが実態だと考えている。各学校の責任で決められていると承知している。
■教育長
ステップアップ授業力向上というのは、教員が大量に退職し、若い教員が増えると、いろんな指導に課題が増えると、そうなると全校でやりたいのが本音だ。そうなるとステップアぷ推進教員というのも、22名選んでいるが、その人数にも制限があるし予算の制限もある。本当は全校でやりたいが、これまでのひまわり学習塾等をやってきた経緯、様々な取り組み、いろんな別のやり方でやっているのもあるので、それを含めて総合的に判断した。
テストは、思考力、判断力、表現力を高めるという観点からすると、単なるドリル的なテストではなくて考えさせるテストが最近非常に大事になっていて、高校入試もすでに変わってきている。全国額テの問題もご覧になったと思うが、ほんとに素晴らしいいい問題だと思う。そういう問題を教育委員会が作ってみんなに使ってもらおうと。そしてステップアップ以外にも当然ながら、希望があればいただくことにしている。
以上