2015年6月定例会 柳井誠議員の一般質疑(30分)
2015年6月定例会 本会議一般質疑と当局答弁(6月15日 月曜日)
◎柳井誠議員の一般質疑(30分)
1、最初に、公共施設マネジメントについてうかがいます。
第一に、市営住宅削減の方向性についてです。
本年5月に都市マネジメント政策室が公表した公共施設マネジメントの考え方をもとに、今年度中に施設分野別実行計画が策定される予定です。本市の市営住宅の計画の方向性では、保有量を約3.3万戸から約2万戸に、延床面積の約30%を削減するというものです。とくに平成50年ころから大幅に保有量が減少するとしています。
市営住宅では平成19年の法改正で低所得世帯が入居できるように入居収入基準等を見直した結果、入居者の所得水準は下がり、高齢化も進みました。また、平成25年3月に発表された国立社会保障・人口問題研究所の地域別将来推計人口によれば、本市の2035年の人口は82.6万人に減る一方で、高齢者人口は29.4万人に増加し、高齢化率は36%となる見通しです。現在の30代、40代の現役世代が高齢者になるときには、今以上に年金・所得の格差が生じると予想されます。その段階で市営住宅を削減することは何を意味するでしょうか。
住宅政策は福祉です。低廉な家賃の公営住宅に入れない低所得高齢者などが増えれば、川崎市の集合住宅火災で社会問題となったような劣悪な住環境の増加が懸念されます。また、それを救うには生活保護制度等他の社会保障政策による支出の増大は避けられません。本市公共施設マネジメント方針の前提は市の施設の改築・維持管理費に限定して収支を見通していますが、市営住宅は、社会保障施策全体から検討されていないという盲点があります。
そこで、今回、示された「方向性」では市営住宅保有量を3割削減しつつ、一方で「必要なサービス水準を維持」するとしていますが、そのサービス水準とは質の面において、また量、すなわち住宅戸数において市民のニーズに十分に応えることが可能なのか、「方向性」の裏付けとなる説明を求めます。
第二に、市営住宅の家賃減免制度についてです。
都市マネジメント政策室が公表した公共施設マネジメントの方向性では、「受益と負担のあり方の視点から、利用料金や減免制度の見直しが示されています。私は、平成16年9月議会の市長質疑において、市営住宅減免の周知徹底を求め、これに対し、当時の末吉市長は「減免制度の活用は大変重要なことで周知啓発に努めたい」と答弁しています。平成26年度の減免実績は5219戸ですが、家賃算定の上で最も低い区分であるAランクの収入月額10万4000円以下の入居世帯にたいする減免実施は約21%です。本市市営住宅の減免要綱には、「家賃の滞納があれば対象とならない」と明記されています。この規定は、病気・失業により所得が著しく減少して滞納しはじめた困窮世帯には申請の障害となってきました。福岡市では、明け渡し請求以外は滞納があっても減免申請を受けており、他都市も同様の取扱を行っています。昨年9月、千葉県の県営住宅で、家賃滞納による強制退去を迫られて発生した母子心中事件をうけて、国土交通省住宅局は「公営住宅の滞納家賃の徴収における留意事項等について」との通知を出しました。通知の内容は、家賃滞納者の収入など事情をよく把握すること、家賃の支払いが困難な場合は家賃減免の適用等の負担軽減措置を講ずること、低所得者などについて福祉部局とも連携し、生活保護の適用などにつなげること、というものです。そこで、国の通知に基づき、本市市営住宅家賃の減免制度の改善、とりわけ滞納者を対象としない規定の見直しを求めます。答弁を求めます。
2、中小企業振興について
次に、中小・小規模企業総合支援事業における取組みについてうかがいます。
この事業では、北九州市中小企業振興条例の周知、中小・小規模企業の実態把握、支援体制強化、及び中小企業団体との意見交換が予定されています。全国に制定の動きがひろがっている中小企業振興条例の主流は、基本条例、産業振興会議、実態調査の3つを連鎖させて取り組んでいることです。
私は、平成26年度から同条例が施行されている松山市を視察しました。松山市の取り組みの特徴は、中小企業、経済団体、金融機関、大学などの関係者、市民団体などで構成される、中小・小規模企業振興のための「振興円卓会議」を任意団体として設立していることです。附属機関ではなく、あえて任意団体とすることで、より自由闊達な意見交換で創意工夫やアイデアがだされ、より良い存在となる経営相談、経営者や従業員の教育支援、新製品・サービスの提供や販路拡大の支援、学生・若者が働きがいを感じ安心して働き続けられる労働環境の整備などの議論がはじまっています。その下には専門部会として①女性の創業支援②女性の就労環境③小中高大学を巻き込んだキャリア教育の各部会を設けて議論を深めていました。また、第2回目となる実態調査も予定されていました。
本市の産業経済局は市内の中小企業・小規模企業の事業所数・従業者数を正確に把握できていないとしています。本市中小企業振興条例素案にたいするパブリックコメントでは悉皆調査をもとめる声がありました。本市の全事業所の中で300人未満の従業者数の事業所が99.8%、同4人以下の事業所が57.97%という状況をふまえた場合、より詳しく、継続的な実態調査が必要ではないでしょうか。また、中小・小規模企業総合支援事業で行われる調査結果をどう活かしていくのか、また、地元大学の学識経験者や金融機関の参加する予定の意見交換の組織づくりには小規模企業・零細企業の意見を反映する仕組みが必要ではないでしょうか、答弁を求めます。
つぎに関連して、中小企業の福利厚生支援についてうかがいます。
小規模企業の経営が消費税増税と円安によりますます困難になっています。建設業界では、公共工事設計労務単価に社会保障費も加えるとともに、事業者全てに社会保険の加入をもとめています。しかし、零細な小規模企業ではこうした経費が負担できないのが実態です。本市の小規模企業への福利厚生の援助としては、特定退職金共済及び普通退職金共済加入者1万3800人を対象に、北九州商工会議所へ350万円を補助して健康診断補助等の事業を行っています。私が視察した松山市では、中退共とは別に、すべての中小企業で働く人を対象に月額700円の会費で人間ドック受診等検診の助成、慶弔共済金の給付、宿泊旅行等への助成金などの事業が行われています。事業費は9400万円で、そのうち、一般会計の繰入は500万円、加入者は650事業所6060人となっています。
本市の中小・小規模企業総合支援事業の実態調査では、福利厚生の面も調査して、松山市等と同様に中退共に加入できていない零細な事業者を対象にした福利厚生事業の実施を検討するべきではないでしょうか。答弁を求めます。
3、最後に、消費税増税の影響と本市の対応についてうかがいます。
歳入の地方消費税交付金のうち消費税8%への引き上げに伴う今年度の増加分を66億円としています。その使い途について、財政局は、保健福祉費および子ども家庭費の社会福祉、社会保険及び保健衛生に要する経費の一般財源合計911億円に充当する、と説明しています。
平成26年1月の総務省自治税務局の通知「引き上げ分に係る地方消費税の使途の明確化について」では、
一つ、「社会保障・税一体改革大綱」(平成24年2月17日閣議決定)において、「消費税収については、その使途を明確にし、官の肥大化には使わず全て国民に還元し、社会保障財源化する」とされたこと。
二つ、引き上げ分の地方消費税については地方税法に「消費税法第1条第2項に規定する経費その他社会保障施策に要する経費に充てるものとする」旨、明記されたこと。
三つ、地方団体はこの趣旨を踏まえ、引き上げ分の地方消費税を全て社会保障施策に要する経費に充て、事務費や事務職員の人件費等には充てないようにするとともに、引き上げ分の地方消費税収の上記経費への充当について、予算書や決算書の説明資料等に明示すること、と通知されています。
今回の平成27年度予算で示された社会保障施策に要する経費の一般財源は911億円であり、平成26年度の904億円から7億円の増額となっています。地方消費税交付金増加分の66億円との差額は社会保障施策のさらなる充実に使われるべきではないでしょうか、答弁を求めます。また、同通知の1ヶ月後に提案された本市の平成26年度当初予算説明資料に国が求めた説明が明示されなかったことや、平成27年度予算説明資料でも地方消費税交付金の増額分と既存の事業の一般財源との区別が明らかでない理由についても答弁を求めます。
柳井誠議員への答弁(6月15日)
■市長
市内事業所の99%、従業員数の約8割を占める中小企業は、条例の前文にもあるとおり市民生活の向上にとって欠くことのできない存在だ。また条例に掲げる理念に基づき、中小企業の支援の拡充や実態を把握し施策に生かしていくことは、中小、小規模企業の振興を推進するうえで大変重要と認識している。
条例の施行に伴う27年度新規拡充事業としては、中小・小規模企業総合支援事業・900万円の実施、小規模企業者支援資金・50億円、小口事業資金・15億円の融資利率の引き下げ、開業支援基金7億円に女性・若者・シニア特別枠を創設し、融資利率の引き下げ及び融資限度額の引き上げ、また商店街などが実施するプレミアム付き商品券の発行を支援するとともに、志賀町品検を直接発行・12億円、補正込だが、こうしたことなどを実施する予定だ。
実態の把握だが、先ほど申し上げた新規事業である中小・小規模企業総合支援事業のなかで、中小企業や小規模企業の実態調査や中小企業団体などの意見集約を行うこととしている。具体的には、中小企業の実態を把握するため市内中小企業、小規模企業を対象とするアンケート調査3000社以上、またヒアリング調査300社以上を実施することとしている。
また通常の企業訪問や来訪対応として、中小企業振興課およびフェースの中小企業支援センターの、26年度訪問は約1400件になっているが、来訪は約2200件だ。こうした対応に加えて中小企業支援センターに新たに小規模企業相談窓口を設け、中小、小規模企業者の相談に丁寧に対応し、その声をしっかり聴きたいと考えている。
さらに中小企業団体、中小企業者、支援機関、金融機関、大学などの代表者で構成する協議会を開催して、各団体等の意見を集約していく。こうした取り組みを継続的に行い、そこで得られた貴重な意見や提案を新成長戦略や来年度以降の予算に反映させることで、小規模企業、零細企業を含む本市の中小企業支援につとめていきたいと考えている。
■都市マネジメント政策担当理事
公共施設マネジャについては、先日、議会をはじめ市民のみなさんのご意見をいただき、議論を深めていくために現時点での考え方を方向性として公表した。市営住宅については、長寿命化を図りつつ耐用年限を迎えるまで長く活用すれば、約25年間、保有量は大きく減少しない。その後、平成50年ころからは耐用年限を迎える住宅が増加し、大幅に保有量が減少することになるが、世帯数の状況や国の動向等を踏まえながら空家など民間住宅を活用することなどにより必要なサービス水準を維持していく、としたところだ。
平成25年、住宅・土地統計調査によると本市の空き家は約7万1000戸あり、その内破損がなく利用可能と思われるものが約5万戸存在している。また今後も高齢化や各家族化の進行が見込まれており、それの伴って空家についても増加すると予測されることから、社会福祉●●としての空き家を有効活用することによって、平成50年以降の市営住宅保有量の減少に対応する考え方だ。
いずれにしても、今回の方向性は幅広く議論いただくためのたたき台として提案したものだ。今後議会や市民のみなさんの意見をいただきながら、施設、分野別の実行計画を取りまとめていきたいと考えている。
■建築都市局長
市営住宅の入居者が、失業、病気、災害、その他特別の事情によって生活が著しく困難になった場合は、市営住宅条例にもとづいて家賃の減免をおこなっている。家賃の減免制度については、入居時に入居者に配布する住まいのしおり、毎年12月に全入居者に配布する市営住宅だより、で案内するとともに、各窓口での相談に加えて納付指導時の説明やふれあい循環員による制度の案内など、入居者への丁寧な説明に努めている。
昨年11月に国土交通省から、公営住宅の滞納家賃の徴収に関して、やむを得ず家賃を支払えない入居者に対して、収入等の状況や事情を踏まえ適切な措置をとるよう、との通知があった。この通知も踏まえ、滞納家賃の徴収については滞納の早い段階で滞納者の対応する、また無理のない支払方法などについて滞納者と相談する、さらに福祉部門と緊密に連携して生活保護などの支援策の情報提供や助言を行うなど、市営住宅に住みつづけられるよう配慮している。
本市としては、現行の減免制度を改めるのではなく、生活に困窮した入居者に対して減免制度についてより一層の周知を徹底するとともに、適切な対応が図れるように努めていきたいと考えている。
■産業経済局長
企業における福利厚生への取り組みは、従業員の福祉増進と企業の発展にとって重要だと認識している。基本的には各企業の経営者が従業員と協議しながらどのような福利厚生が必要かを判断し、企業自らが取り組むものと考えている。しかしながら小規模企業が単独で福利厚生に関する制度を整えることは難しいため、本市では加入者の相互扶助促進の観点から北九州商工会議所が退職金共済制度において実施する福利厚生サービス、健康診断受診料の補助等だが、に対して補助金年間350万円を交付している。
この制度は市の外郭団体、財団法人北九州中小企業共済センターが実施していた事業の長期安定化を目的として、平成20年3月1日に同様の事業を行っていた北九州商工会議所に引き受けていただいたものだ。そういう経緯がある。
このため財団法人北九州市中小企業共済センターは、これを機に解散している。従って本市が直接福利厚生を支援する組織や制度を作ることは難しいと考えているが、北九州商工会議所を通じて現状の福利厚生の支援を継続していきたいと考えている。
なお他都市の支援状況については、今後調査を行いたいと考えている。
■財政局長
平成27年度予算における本市の社会保障施策に要する経費は、前年度に比べて101億円の増となる1949億円、所要一般財源は7億円増の911億円であり、この一部に消費税率引き上げによる地方消費税交付金の増収分66億円をあてている。
社会保障施策にかかる経費が大幅な増となっている一方で、所要一般財源が7億円の増にとどまっているのは、今回の消費税率引き上げに伴う制度改正により国や県からの財源が大幅に増加したことなどによるものだ。なお地方消費税交付金が増収になることに伴って、地方交付税等が65億円の減となることから、本市の一般財源総額は6億円の微増となる見込みだ。
次に使途の明示については、平成26年度は予算説明資料に社会保障施策に要する経費の財源として活用することを文章で表記することとしたものだ。なお多くの政令市も同様の対応となっている。平成27年度は、文章表記に加えて他の政令市の資料などを参考に経費の内訳が分かる資料を予算関連公表資料に添付したところだ。
今後ともさらにわかりやすい資料となるよう、工夫をしていきたいと考えている。
<第2質問への答弁>
■財政局長
(市民への予算説明パンフにも来年度は地方消費税使途を明記すべきだ)
まずは国の通知だが、地方消費税の使途について予算書や決算書の説明資料等において明記すべしと、いうことだったので、まずは公表時の予算説明書で明示することとした。ご指摘の市民に分かりやすい財政状況の説明ということについて、非常に重要な観点と思っているので、わかりやす財政状況について、冊子についてわかりやすい工夫を検討したいと思っている。
<第3質問への答弁>
■財政局長
国の通知に添付されている表だが、そういうものを参考にしてわかりやすい工夫ができないかということを検討したいと思っている。
<第4質問への答弁>
■産業経済局長
私どもとしては、小規模企業の振興というのは大事だと考えている。今後については、条例に基づいて、協議会、実態調査を踏まえるが、特に小規模企業についてはそれを踏まえたいろんな調査、PRをやっていくつもりだ。
<第5質問への答弁>
それについては私どもは協議会をこの夏にも開きたいと思っている。そういうご意見を踏まえて検討させていただきたい。
<第6質問への答弁>
(中小企業実態調査・福利厚生面について)
実態調査の中で福利厚生についてだが、例えば共済への加入の状況とか、また福利厚生制度、今後の課題、ニーズについては実態調査の中で聞きたいと考えている。
以上