2015年12月定例会 藤沢加代議員の一般質問(30分)
2015年12月8日(火)
◎藤沢加代議員の一般質問(30分)
私は、日本共産党市会議員団を代表して一般質問を行います。
まず、八幡市民会館・八幡図書館の存続を求め、3点質問します。
新八幡病院の建て替え計画から急浮上した八幡市民会館の廃止と図書館の移転問題は、単純ならざる問題に発展しています。その1つは新病院の建設予定地として土地の形状から敷地面積の62%しか活用できず、現市立八幡病院の敷地面積よりも狭くなってしまう、旧尾倉小学校跡地に決定した経緯及び八幡市民会館の廃止と八幡図書館の解体決定に至る検討経過が明らかにされていないことです。
「八幡市民会館と八幡図書館の存続問題を考える会」が行った前述の経緯及び検討結果に係る情報開示請求のうち2件が今日まで不開示となったままであり、当局は、その理由を「現段階では意思形成の途上にあり、(中略)率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ、不当に市民の間に混乱を生じさせるおそれ」があるためとしています。
しかし、「意思形成の途上」と言いながら、既に旧尾倉小学校跡地に新病院を建てる計画を進め、八幡市民会館の廃止も決定しています。八幡図書館に至っては移転工事をすすめているではありませんか。「中立性が不当に損なわれるおそれ、不当に市民の間に混乱を生じさせるおそれ」とはどういうことなのでしょうか。理解できません。そこで第1にこれらの情報が不開示のまま、市の説明責任が果たされない状況の中で計画を進めることは許されません。八幡市民会館の廃止と八幡図書館の移転工事・解体は中止すべきです。答弁を求めます。➀
第2に、旧尾倉小学校跡地内の九州国際大学の文化交流センターと平野小学校跡地の交換に関する問題です。
文化交流センターの2階部分の一部と3階部分を新病院の管理棟として活用すれば、建設費用を節約できるとして、市が九国大に文化交流センターの譲渡を申し入れたのに対し、九国大は平野小学校跡地との交換を提案し、九国大が市に差額約3850万円を支払うことになりました。
九国大との借地契約は2017年3月末で切れることになっていました。契約期間満了後は現状回復ののち、返還することとなっていました。1年半後には更地にして返すことになっている土地です。ここを駐車場にすれば八幡図書館を解体する必要がなくなります。なぜ、あえて築18年も経過した建物を使用するのでしょうか。交換が先にありきとの疑念が生じます。平野小学校跡地を交換してまで文化交流センターを使用する理由と、九国大と交換合意に至った経緯について、答弁を求めます。②
第3に文化庁の「近現代建造物緊急重点調査事業」に関連してお尋ねします。「著名な建築家による建築や優れた技術による土木構造物など、戦後を含む我が国の近現代建造物は、国際的に高い評価を受けているが、文化財としての保存の措置がほとんど講じられていない。これらの適切な保護を図るため、緊急かつ重点的に調査を実施する」として、文化庁は、来年度予算の概算要求を行っています。同庁は、東京オリンピックを控え、価値が定まらないうちに既存の建築物が壊されてしまうことを危惧しています。近現代建築のうち戦後に建てられたものは、ほとんど調査されていないため、来年度から全国6ブロックに分け6年がかりで調査に取り組むとしています。この調査が終わらないうちに、本市縁の著名な建築家・村野藤吾氏が設計した八幡図書館を壊してしまっては取り返しがつきません。図書館の解体は撤回すべきです。答弁を求めます。③
国有地医療刑務所跡地から発見された城野遺跡は、2009~2010年に実施された調査によって、邪馬台国と同じ弥生時代後期の大規模な集落跡であることが分かりました。貴重な水銀朱を塗った幼児を埋葬した石棺2基が出土した九州最大規模の方形周溝墓と、玉つくり工房跡は九州で2例目という学術的に大変重要なものです。日本考古学協会も専門家の立場から、国や県そして市に対し現地保存を要望しています。
市は当初、現地保存するとしていましたが、保存用地の確保をめぐり土地所有者である国との折り合いがつかず、2014年には現地保存は断念し、石棺は移築保存、玉つくり工房は記録保存としてしました。要するに遺跡を壊してしまうということです。民間に売却され壊されてしまうと取り返しがつきません。市民の財産である貴重な遺跡がこのまま壊されてしまうのを手をこまねいてみていては、市民憲章に掲げる「文化のかおるまち」とは到底言えません。いよいよ国はこの11月20日に一般競争入札の公示を行い、12月10日から24日までを入札受付期間としましたが、まだ間に合います。現地保存に向けてもう一度考え直すことを求め、見解を伺います。④
藤沢加代議員の質問への答弁
■市長
城野遺跡は平成21年から22年に発掘調査を実施した。3世紀後半の九州最大規模の方形周溝墓、水銀朱を塗った石棺、勾玉を製造していた工房跡が発見されるなど、弥生時代の大規模な集落跡であることが判明し、今から2000年前の人々の営みが残る大事な遺跡であると認識している。
遺跡をどのように保存し、活用していくかについて文化庁は埋蔵文化財行政の基本、本来のあり方は地域にある埋蔵文化財を正確に把握し、それぞれの内容、価値に応じて適切に保存し活用することであるとしている。これを受けて、遺跡の保存方法としては、一つ、現在ある状態のまま将来に伝えていく現地保存、二つ、現状保存を図ることができないため発掘調査を行い、その成果である報告書を刊行し出土遺物とともに活用していく記録保存、三つ、特に重要な遺構について記録保存だけでなくほかの場所に移し元の形に復元する移築保存、の三つがある。
平成23年から25年にかけては、現地保存を行うべく土地の所有者である国と協議を行ってきたが、合意ができない中で国が売却手続きを開始したことからこれ以上の協議は困難と判断した。本市の保存に関する考え方としては、専門家の意見を伺い貴重な水銀朱を塗布した石棺については、適切に保存し活用するうえで温湿の管理ができる国内での移築保存、玉造工房跡については現地での詳細な調査に基づき報告書を刊行する記録保存が最もふさわしいという方針とした。
取り上げた石棺は埋蔵文化財センターにおいて、出土した状況を正確に復元した上で弥生時代の埋葬の様子がわかるような展示にするため、本年度実施設計を行っている。これにより本物をまじかに見ることが可能になる。水銀朱の赤い色は、見た人に強いインパクト与え、北九州の歴史に興味を持つ契機になると考えている。
また展示に合わせ、子ども向けの玉造や青銅器づくりを行う体験講座や、大人向けにはシンポジウムや市民考古学講座などを実施したいと考えている。
■市民文化スポーツ局長
八幡市民会館と八幡図書館の取り扱いについては、平成25年度に市の関係部局で構成した政策調整会議において検討を行った。検討にあたっては著名な建築家である村野東吾氏の設計した建物であること、様々な市民の意見があること、公共施設マネジメントの総量抑制の考え方、さらには保健病院委員会からいただいた所管事務調査での提言、これらを総合的に判断して両施設に関する方向性を決定したものだ。
その方向性の内容だが、八幡図書館は平成27年度末を目途に移転し、建物は移転完了後に撤去する、八幡市民会館は27年度末をもって廃止し、建物の取り扱いについては民間活力の活用を前提として平成27年末を目途に検討を行うというものだ。
八幡市民会館の廃止に向けては、昨年の4月から6月かけて利用している100以上の団体に対して丁寧に説明を行い、市の方向性について概ね理解をいただいた。議会においては昨年3月と6月、および本年の6月と9月に八幡市民会館と八幡図書館の存続を求める陳情を受けて、いずれもそれぞれ所管の常任委員会において不採択となっている。さらに八幡市民会館の機能については、本年3月議会において27年度末をもって八幡市民会館を廃止する条例改正案を承認いただいているところだ。
このように八幡市民会館の廃止及び八幡図書館の解体に向けた手続きは、公共施設マネジメントの総量抑制の考え方を前提として、関係者の意見やこれまでの議会の議決も踏まえてすすめているもので、計画を中止するかんがえはない。
なお、本年7月に八幡市民会館と八幡図書館の存続を考える会から、これまでの検討経過に関する行政文書開示請求を受けたが、今回の対象文書は、北九州市情報公開条例に規定する不開示条項に該当すると判断して不開示の決定を行ったものだ。
■病院局長
新八幡病院の建設予定地については、平成24年11月に、①病院事業への財政負担の軽減や市有地の有効活用の観点から、一定規模の面積が確保できる市有地であること、②八幡病院が担っている救急、小児、災害医療といった政策医療の特性から、近傍で本市の中心部に位置する場所であること、③車でのアクセスが良く、バスやJRといった公共交通機関の利便性に優れていること、などの理由で尾倉小学校跡地とすることを発表した。
その時点から、建設予定地内にある文化交流センターは、平成9年の建設で耐震性能も有しているため、使えるものは使おうという観点で病院施設として活用できないか検討していた。平成26年3月31日に、新八幡病院周辺の公共施設に関する方向性を打ち出す際、この建物は今後30年以上の使用が可能であること、また約5億5000万円の病院整備事業の縮減が図れること、八幡図書館と新病院の管理部門として共同で活用することを正式に発表したものだ。
その後、平成26年6月議会で、新八幡病院基本設計費の補正予算の議決を踏まえて、同年7月に九州国際大学に文化交流センターの譲渡を依頼した。そして翌8月に大学側から平野小学校跡地との交換の申し入れがあり、それに応じたものだ。文化交流センターと平野小学校跡地の交換にあたって、その価格は不動産鑑定士による鑑定評価額をもとに市有財産審査委員会で決定し、差額の約3850万円を大学が市に支払うことで本年4月30日に契約を締結したものだ。
このような経緯を経て、本年8月31日に大学から建物の引き渡しを受け現在、改修工事を行っているところだ。
続いて、文化庁の近現代建造物緊急重点調査事業が終わらないうちは、図書館の解体を止めるべき、とのお尋ねだ。
近現代建造物緊急重点調査事業は、国際的に高い評価を受けている近現代建造物について、文化財としての保存措置がほとんど講じられていないといったことから、本年度に創設されたものだ。この調査は、国が主体となって行うもので、国、県、市の指定文化財および無指定建造物も対象になると聞いているが、具体的な調査内容、調査時期も定まっていない。
一方で、八幡病院は救急、小児、災害医療など地域の基幹病院としての役割を果たしているが、施設の老朽化、狭隘化が進み一部耐震基準を満たしていないといった施設面での課題があり、市民の命にかかわることから一刻も早く充実した施設で医療を提供したいと考えている。
そのため平成24年8月に、平成29年度中の開院を目指した建て替えを具体的な取り組みに着手すると表明して以来、議会での審議、承認やパブリックコメントなど様々な手続きを経て現在、ようやく実施設計にとりかかったとろだ。当初より1年遅れとなったが、今後とも平成30年度中の開院に向けて着実に取り組みをすすめていきたいと考えている。従って、現図書館については予定通り、来年4月中の移転完了や解体に着手する考えだ。
<第2質問以下の答弁>
■市民文化スポーツ局長
遺跡の保存については、3通りある。現地保存してしまうと、結局見えない、土の中だ。それに伴って広大な面積も必要になってくる、今回の城野遺跡については、国の国有地だったから、国の方にも保存について市から要請したが結局話がつかなかったという経緯を申し上げた。で、次善の策として石棺については掘り出しをした。掘り出しをして今後埋蔵文化財センターできちんと、本物を展示していくと、温室の管理ができるところで保存していくということで、九州初の方形周溝墓についても、記録として残していくので、国の方からの合意は取れなかったが、市としてはきちんと保存して市民に見せていくことを考えている。
■市民文化スポーツ局長
土地の売却についてはすでにもう始まっている。市が取得をしようと思えば、入札参加をするということになる。側面支援するということについても、石棺を取り上げて、実施設計をして埋蔵文化財センターのほうに展示ケースを作って、そこできちんと保存をしていこうという形での支援をしている。現在、最低入札価格が7億円以上もするようなところに市として入札参加することは考えていない。
■市民文化スポーツ局長
(八幡市民会館、八幡図書館がドコモモの選定を受けたことをなぜ市民に知らせていないのか)
BCS賞、建築業協会からの賞だ。これについては1960年、八幡市民会館が会館した当時にいただいた賞だ。長く使うということで広報もしているし、正面玄関のところにプレートも張っている。ドコモモのモダンムーブメントいうことで賞を受けている。これについては八幡市民会館が有する歴史的価値と、あるいは文化的価値というのが評価された結果だろうということは私ども認識している。
ただ、八幡市民会館の取り扱いについては村野東吾氏の設計したことを考慮はしているが、市民の様々な意見があるし、公共施設マネジメントの総量抑制という考え方もある。総合的に考えて市民会館の機能停止と、建物については民間活力の活用を前提として活用策を検討するということにしている。八幡市民会館の建物については、リボン委員会で検討されている、そういう段階のものについて市が積極的に広報するということは考えていないということだ。
■市民文化スポーツ局長
(文化庁の登録有形文化財建造物制度の活用をして八幡市民会館・図書館を残してはどうか)
国の有形文化財の登録には所有者の登録が必要になる。八幡市民会館・図書館については、市民会館については廃止、図書館については解体ということで決定しているので、改めて市の方からこの登録に申請する考えはない。
以上