2017年6月定例会 本会議質疑と当局答弁 田中光明議員 一般質問
2017年6月定例会 本会議一般質問と当局答弁
2017年6月9日(金)
◎田中光明議員 一般質問(30分)
日本共産党の田中光明です。会派を代表して一般質問を行います。
特別養護老人ホーム、いわゆる特養などの介護保険施設入所者の負担が重たいという相談が増えています。八幡西区の80歳代の女性からは、「夫が特養に入ったが、1か月の負担は13万円を超え、貯金もなくなり、夫の年金では生活できない。」という相談でした。
この女性は無年金で、夫の年金しか収入がありません。年金の振込額は、1か月21万5千円で、特養の負担金を払うと、残金は8万円を下回ります。生活保護基準以下の生活費です。保護課に相談すると、「境界層」で特養の負担金は安くなるかもしれないということで、生活保護を申請することになりました。月におよそ数万円負担金が減るとのことです。
特養など介護保険施設入所者には、世帯の収入などに応じて、居住費や食費の負担を軽くする「補足給付」という制度があります。本来の基準額は、1日当たりの食費が1,380円、ユニット型個室の居住費は1日当たり1,970円で、これに介護サービスの負担月額3万円前後が加わり、1か月当たりの負担金は13万数千円になります。補足給付を申請すれば、収入等に応じて、食費は段階的に1日当たり650円、390円、300円に、居住費は1日当たり1,310円、820円に引き下げることができます。
本市の平成29年1月末時点の介護保険施設入所者数は8,077人です。平成28年12月末時点で、介護保険施設において「補足給付」の適用となる負担限度額認定証が交付されている方は延べ人数ですが6,674人、82.6%です。本市が利用者に様々な説明書などで知らせ、窓口でも丁寧な説明を行っているため、周知はかなり徹底されていると思います。これは、介護の窓口で申請できます。
しかし、「補足給付」を受けても、生活保護基準以下という方もいます。その場合は、さらに食費や居住費、介護保険料、医療費負担などを下げられる場合があります。申請は保護課で受け付けられ、「境界層該当証明書」が出れば負担金が下がり、生活保護は却下されます。平成28年度末の「境界層」該当者の人数は73人です。これは平成29年1月末時点の施設入所者の0.9%です。該当者はもっといるのではないでしょうか。この制度を知らない方が多いのではないでしょうか。保護課に申請に行くことも高いハードルです。
介護保険サービス利用の自己負担は、平成27年8月から一定の収入以上の方は2割になり、先般の制度改悪で平成30年8月からは一定の収入以上の方は3割になります。専門家は「利用控えが起こる」と懸念しています。そして、「境界層」の該当者が増加することが想像され、その重要性はますます増えると思います。
本市の介護の窓口では、「補足給付」だけでなく、「境界層」も丁寧な説明が必要だと思います。同様に、介護保険施設にも、丁寧な説明を行うよう、行政として指導すべきではないでしょうか。見解を伺います。①
「境界層該当証明書」の発行は保護課が担当ですが、ワンストップを目指して、介護の窓口で対応できるように国に要請すべきではないでしょうか。見解を伺います。②
小倉北区の男性が「おにぎり食べたい」と書き残して餓死した事件から10年が経ちました。本市の生活保護行政はどうでしょうか。「水際作戦」ともいうべき窓口対応が、いまだになされているのではないでしょうか。
平成28年度の生活保護の相談件数は5,758件、申請件数は2,110件、申請率は36.6%で申請したのは相談者の3人に1人です。保護開始は1,956件で、決定率は92.7%。相談者に対する決定者の割合は34.0%です。一方、福岡県は平成27年度の決定率は85.8%で、郡部では69.1%です。この数字は、相談窓口での対応に要因があることを示していると考えられます。窓口で申請に至らない人が多いほど、決定率が高くなっているのではないでしょうか。政令市では、申請率50%未満が8政令市、50%以上が12政令市です。本市は最も低い政令市の一つです。
今年4月18日の保健病院委員会で、当局は「生活保護の相談に来られた方には、相談者の立場に立った丁寧な対応を行い、生活保護が必要な方に保護の漏れがないように努めたい」と答弁しています。問題は、生活保護が必要かどうかを、窓口で判断していないかということです。本来、生活保護は、申請を受け付けて初めて審査が始まるべきで、窓口で判断すべきではありません。
申請に至らなかった理由で最も多いのが、「制度説明のみ」などで47.3%。つまり、いろいろ説明して引き取ってもらっている。「水際作戦」「事前審査」ともいわれる窓口対応が行われていると言わざるを得ません。
明らかに収入が多い人や、現金・預金が多い人をのぞくすべての相談者に、申請書を渡すべきではないでしょうか。③
生活保護の要否については、生活保護基準額以上の収入や預金などがあるのかどうかが最も重要な判断材料です。相談者が保護を受けられるかどうかの判断を自分自身でするためには、この生活保護基準額を知らせることが重要だと思います。丁寧な説明とは、こういうことを言うのではないでしょうか。すべての相談者に、生活保護基準の概算額を示すべきです。見解を伺います。④
八幡西区の市営住宅に住んでいる母子家庭の母親から、部屋が狭いので住み替えたいという相談がありました。娘さんは中学3年生で、高校受験に向けて勉強していますが、部屋がないので、台所に机を置いて勉強していると言います。当局に問い合わせると、「この世帯の床面積は44.85㎡あるので、2人世帯の29~56㎡に合致しているから、面積基準で住替えはできない。一般公募で申し込んでください」という回答でした。
この方の間取りは1LDKです。LDKとは名ばかりで、面積は8.87畳しかありません。あとは6畳1部屋のみ。つまり実態は、9畳弱の台所と6畳の寝室1つしかないのです。実際に部屋に伺うと、台所の片隅に勉強机を置いて、廊下や玄関に教科書などを置いている状態でした。この母親は、試験前などには子供さんを気遣い、外出しているといいます。娘が気兼ねなく勉強するために、あと1部屋ほしいと、強く望んでいます。
国土交通省が定める、誘導居住面積水準というものがあります。世帯人数に応じて、豊かな住生活の実現の前提として、多様なライフスタイルに対応するために必要と考えられる住宅の面積に関する水準です。都市の中心及びその周辺における共同住宅居住を想定した都市居住型誘導居住面積は水準で、20㎡×世帯人数+15㎡です。2人世帯では55㎡です。この母子家庭の部屋面積より約10.5㎡、およそ6畳分多いのです。
本市の市営住宅条例では「公募の例外」の一つに、「既存入居者又は同居者の世帯構成及び心身の状況からみて市長が入居者を募集しようとしている公営住宅に当該既存入居者が入居することが適切である」と判断すれば」住替えができるとあります。母子家庭で、必死に働く母親と、高校受験を控え、また高校に入ってからも勉強しなければならない状況を考えれば、少なくとも、2DKは必要だと思います。あと一部屋ほしいという、この母親の望みは贅沢でしょうか。本市は「住替え」を認めるべきだと思いますが、見解を求めます。⑤
以上で第一質問を終わります。
田中光明議員への答弁
■市長
介護保険制度は高齢者の介護を社会全体で支える仕組みとして創設された社会保険制度である。そのため誰もが必要な時に介護サービスを利用できるように低所得者に対する配慮として、利用者の負担を軽減する様々な制度がある。
この内補足給付とは、介護保険施設である特別養護老人ホームなどに入所する場合、自己負担が原則となっている食費や居住費について、申請により負担を軽減する制度である。これは市民税非課税世帯で一定の条件を満たす方を対象とし、本来支払うべき額との差額を介護保険で給付するもの。
また境界層措置とは、現在の食費や居住費、介護サービス利用料などを支払うことで、生活保護を必要とするほど生活が困窮する場合、利用料などの額を引き下げることで、生活保護を必要としない状態を確保する制度である。
本市としても生活困窮のため必要な介護サービスが受けられなくならないよう利用者などに対し、負担軽減制度の周知を行うことが大切だと考えている。
このためサービスの利用者に対し、制度の内容を解説したチラシ等を介護保険料の納入通知書に同封し周知するとともに、利用者やその家族が介護保険の窓口に来所した場合に詳しく説明を行っている。
一方、特別養護老人ホーム等の介護保険施設も利用者の心身の状況やそのおかれている環境の的確な把握につとめ、利用者やその家族に対し必要な助言などを行う役割を担っている。また負担軽減制度を活用すれば利用者が安心して介護サービスを利用でき施設の収益の安定にもつながることから、事業者側にも利点があると考えている。このため事業者を通じた利用者への周知説明については、毎年度周知を行ってきた補職給付に加え境界層措置や高額介護サービスなど、他の負担軽減制度の周知説明についても平成28年9月、平成29年5月に約634事業者に協力依頼を行った。今後とも介護保険施設が利用者の状況に応じて適切な助言援助など行うことが出来るよう、例えば市が主催する集団指導の場などを活用して、必要な情報を適宜提供していく。
■保健福祉局長
(境界層措置はワンストップで介護窓口でも可能にするよう国に要請すべき)
境界層措置については、介護保険の保険者である市町村が行うものであるが、その適用にあたっては生活保護の可否を決定する福祉事務所長の証明を要するとされている。具体的には国の通知において、生活保護の申請を行った被保護者に対して、福祉事務所長が保護申請を却下の上、必要な境界層措置を行うこととされている。この生活保護申請の受け付けは、福祉事務所長の重要な職務の一つであり、ワンストップを理由に介護保険窓口での境界層該当証明書を発行するという事は考えていない。国への要請も考えていない。
なお議員指摘のように、境界層措置の手続きについて不満がある市民もおられるかもしれません。そういった場合には必要に応じて区の介護保険の担当職員が保護課に同行して、境界層措置が適用になる可能性がある旨の説明を加えて、引継ぎを行うという丁寧な対応を徹底してまいりたい。
本市の生活保護行政は、その入口と出口で丁寧な対応を行う事など、生活保護が必要な方を確実にサービスにつなげる精鋭な努力をしている。具体的には生活保護の相談にこられた方に対して、全ての方に申請意志を確認したうえで、申請しない方には申請書を交付し、記入方法を説明している。
また申請権の侵害や信頼を疑われるような行為を慎むことを相談業務手引書に明記して徹底している。
平成28年度の生活保護相談件数は5758件であったがその内3648件が申請にいたらなかったということである。その理由を見てみると、将来の不安などのために生活保護制度の説明を聞くことが目的であったという方47.3%、収入などが生活保護基準を上回ってことが窓口に来て話を聞いてわかったという方が32.1%、雇用保険などの他方他施策の活用によって生計維持の可能な方が10.4%、こういった内訳になっている。大多数の方が福祉事務所職員の説明を聞いたうえで納得して申請せずに帰られているという状況である。
一方、収入や現金・預金が多いといわれる場合でも、相談に来られた方で申請意志を示された方は、当然申請書を交付して申請手続きの支援を行っている。また、議員指摘の相談に来られた方に、生活保護の基準額を示すということについては、現在でも収入や資産などの状況によって、説明の中で基準額を出して説明することが必然になってくる。必要があると思われる方にはそうした説明を行っている。こうした取り組みを着実に行うため、毎年度当初には新たに福祉事務所に配置された相談担当係長を対象とした研修を行っている。また保健福祉局保護課が福祉事務所に対して指導監査などにおいて、面接相談記録を点検している。相談業務が適切に行われている確認をしている。今後とも生活保護の相談に来られた方に対して、相談者の立場にたった丁寧な対応を行い、生活保護が必要な方に保護の適用が漏れることがないようにすすめてまいりたいと考えている。
■建築都市局長
市営住宅は住宅に困窮する低所得者に対して、低廉な家賃で最低居住面積水準を満たす住宅の供給を目的としており、公募による入居が原則であるが、例外として公募によらない住み替えが可能である。
公募の例外の住み替えの条件は、公営住宅法施行令第5条に基づき北九州市営住宅条例第6条第7号及び第8号において、同居者の人数に増減があったこと、加齢・病気等で日常生活に身体の機能に制限を受けるものとなったこと、その他世帯構成及び心身の状況からみて既存入居者が入居することが適切であること、入居者が相互に入れ替わることが双方の利益になること、となっている。それ以外の理由を市が定めることができず、子どもの成長があった住み替えはこれらの事由に該当しない。市営住宅の入居者においても、一定の条件が整えば、抽選による空き家入居募集や定数選考による住宅困窮者募集に応募することができることから、当該世帯についてはそれらの方法を活用していただきたいと考えている。市営住宅の入居に当たっては、今後とも法令に基づき公正公平な入居者の募集に努めてまいりたい。
<第2質問以下への答弁>
■保健福祉局長
生活保護の申請の意志のある方が窓口に来られるわけですが、まずは生活保護を申請されるかどうかのところで、最初の相談がはじまりまして、保護の決定がされるかどうかというのは、その方の資産や収入の状況、そうしたことをいろいろ調査して最終的に決まるわけです。そうしたことを丁寧に対応したい。
■保健福祉局長
(申請書を受付けて審査して、はじめて生活保護が必要かどうか決まるもの)
それは、まさにおっしゃるとおりです。私は相談に来られた時に最初にこうしたことを話すと申し上げたことは、どちらかと言えば生活保護の制度の説明をするという中で、収入はこういう場合は、適用はこうなりますとか、そしたことを説明するわけで、門司福祉事務所で所長をしていましたが、生活保護を受けたいと相談に来られ方でも、保護制度を説明する中で、例えばですが原則としてマイカーは持てないですよと話をすると、申請をしばらくやめたと帰られる方もおられます。生活保護を受けるということは、条件が整わなければだめとまず説明するということで申し上げた。
■保健福祉局長
(窓口で該当しませんと言ったようなニュアンスで、担当する方が対応するは絶対にないのか)
生活保護の基準がありますから、例えばその方の資産とか収入がその基準を上回っていれば、これは数字で見ればわかりますから、答弁で申し上げたように、どんなに説明しても申請したいと言われる方には申請書を差し上げて、申請書の書き方の指導をいたしますが、その場合でも収入が上回っていれば、これは上回っていますので出されてもだめかもしれませんと申し上げます。
■保健福祉局長
(申請する意志があるかどうか確認するということであるが、必ず聞いているという理解でいいのか)
必ず確認している。
■保健福祉局長
(自動車を持っている方、持ち家の方は、処分しなければ申請できないか)
自動車の場合、これも私が保健福祉事務所長をしていた時、例えば病気によって日光に直接当たれば病状が激しくなる方の場合でしたが、病院の通院にマイカーを持つことを認めたと例もある。生活保護から脱却目指して、生活立て直しで仕事を見つけられ方で、どうしても仕事でマイカーがいる方にも車の使用を認めたこともある。自宅を所有されている方で、手元に金額の基準は持ち合わせていませんが、資産の評価が一定の範囲内であれば自宅を持ち続けるとことが認められている。
■保健福祉局長
(自動車、持ち家がある場合は、生活保護の申請ができないのかと聞いている。できるということでいいですね。した後で審査し判断するとの理解でいいのか)
そのように指導している。
以上