北九州市小児ぜん息患者医療費支給条例(2000年2月議会)
児童福祉法の精神に基づき、児童の健全な育成と「子育て支援」の一環として、患者家庭の医療費負担の軽減を図るために、条例を提案しました。
北九州市小児ぜん息患者医療費支給条例
(目的)
第1条 この条例は、小児ぜん息患者に対し、医療費を支給し、もって児童福祉の増進を図ることを目的とする。
(定義)
第2条 この条例において「小児ぜん息」とは、次に掲げる疾病及びこれらの続発症とする。
(1) 気管支ぜん息
(2) ぜん息性気管支炎
(3) 慢性気管支炎
(4) 肺気しゅ
(対象者)
第3条 この条例により、医療費の支給を受けることができる者は、本市の区域内に引き続き1年(3歳未満の者にあっては6月)以上住所を有する年齢18歳未満の者で、前条に規定する小児ぜん息にかかっているものをいう。
(適用除外)
第4条 前条の規定にかかわらず、次に掲げる者については、この条例の規定は、適用しない。
(1) 生活保護法(昭和25年法律第144号)による保護を受けている者
(2) 公害健康被害の補償等に関する法律(昭和48年法律第111号)による認定を受けている者
(申請及び医療費受給証の交付)
第5条 医療費の支給を受けようとする者は、規則で定める申請書を市長に提出しなければならない。
2 市長は、前項の申請を受けたときは、その者に対し、医療費受給証を交付する。
(医療費受給証の提示)
第6条 医療費受給証の交付を受けた者(以下「受給者」という。)は、病院、診療所若しくは薬局又はその他の者(以下「医療取扱機関等」という。)で医療を受ける場合、当該医療取扱機関等に医療費受給証を提示しなければならない。
(医療費の支給等)
第7条 市長は、受給者が第2条に規定する疾病について、次に掲げる医療を受 けたときは、医療費を支給する。
(1) 診察
(2) 薬剤又は治療材料の支給
(3) 医学的処置、手術及びその他の治療
(4) 居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護
(5) 病院又は診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護
(6) 食事療養
(7) 訪問看護
(8) 移送
2 前項に規定する医療費の支給期間は、第5条第1項による申請が受理された日から1年間とする。
3 市長は、受給者の申請に基づき、引き続き医療費を支給することが必要であると認める場合は、支給期間を1年ごとに延長することができる。
4 市長は、受給者が転出(本市の区域外へ住所を移すことをいう。)したときは、当該転出した日の翌日以後の医療費は、支給しない。
(医療費の額)
第8条 前条第1項の規定により支給する医療費の額は、当該医療に要する費用の額を限度とする。ただし、受給者が第2条に規定する疾病につき、規則で定め る社会保険各法等の規定により医療に関する給付を受け、若しくは受けることができたとき、又は当該医療が法令の規定により国又は地方公共団体の負担による 医療に関する給付として行われたときは、当該医療に要する費用の額から当該医療に関する給付の額を控除した額を限度とする。
2 前項の医療に要する費用の額は、健康保険法の規定による療養に要する費用の額の算定方法(平成6年厚生省告示第54号)その他法令による算定方法により算定した額とする。ただし、現に要した費用を超えることができない。
(医療費の支給方法)
第9条 医療費の支給方法は、規則で定める。
(届出等)
第10条 受給者は、次の各号のいずれかに該当した場合は、速やかにその旨を市長に届け出なければならない。
(1) 第3条の規定に該当しなくなったとき、又は第7条第4項の規定に該当したとき。
(2) 医療費受給証の記載事項に変更を生じたとき。
(3) 医療費受給証の紛失等により再交付を受ける必要が生じたとき。
2 前項第1号の規定に該当した者は、速やかに医療費受給証を市長に返還しなければならない。
(医療費の返還)
第11条 偽りその他不正の行為によってこの条例による支給を受けた者があるときは、市長は、その者から当該支給額の全部又は一部を返還させることができる。
(譲渡又は担保の禁止)
第12条 この条例による支給を受ける権利は、譲渡し、又は担保に供してはならない。
(委任)
第13条 この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。
付 則
この条例は、規則で定める日から施行する。
2000年2月議会
「北九州市小児ぜん息患者医療費支給条例」案の理由説明を有馬和子議員が行いました。
北九州市小児ぜん息患者医療費支給条例提案の理由説明
平成12年2月議会 市会議員有馬和子
議員提出議案第1号「北九州市小児ぜん息患者医療費支給条例」につきまして、提案理由の説明を致します。
昭和48年10月5日施行された「公害健康被害の保障に関する法律」は、昭和63年改正され、新規公害患者の認定が中止されました。しかし、東京都・川崎市・大阪市をはじめ大都市圏では自治体独自で条例を制定し、小児ぜん息患者の医療費の支給を実施しています。
咋年の受診状況調査では、大気汚染が原因とみられる子どものぜん息患者が、増えつづけていることが明らかになりました。
川崎市では、20才未満を対象に医療助成が実施されていますが、98年度の患者が前年度より600人増加し、5,574人となり1O年前の2.1倍に、大阪市では15才未満が対象ですが、前年度より400人増えて18,983人、1O年前の5.2倍になっています。
本市でも学校保健統計によれぱ、小中学校のぜん息は平成6年から急速に増加し、1O年度の定期健康診断の結果では、ぜん息は小・中学生併せて2,908 人で、児童生徒の3.27%に達しています。4年間で小学生は1.87倍、中学生は1.62倍に増加し ています。ぜん息の原因が主として、自動車排ガスによる浮遊粒子状物質一SPMの増加 や二酸化窒素などによる大気汚染にあることは、科学的な調査でも明らかになりつつあります。1月末の尼崎公害裁判では、「SPM等の排出差し止め」を含む 画期的な判決がでました。
本市においても、98年の公害状況調査でSPMは、全14地点で環境基準を超えていることが報告されています。こうした中で、特に弱い立場の小児ぜん息患者に対する医療助成は、早急に拡充すべきであります。
国も現在「小児慢性疾患治療研究事業」により、20才未満のぜん息患者の1ヵ月以上の入院については、入院時の医療費と食事療養費を公費負担していま す。又、本市においても乳幼児医療助成制度により、3才までの通院・入院治療費と4才の入院治療費は助成制度がありますが、最も多い4才以上の通院や1ヵ 月未満の入院は対象となっていません。
小児ぜん息患者にとっては、発作時の苦しみは筆舌に尽くしがたいものがあり、介護をする家族の精神的・経済的負担は図り知れません。2才の小児ぜん息の 子どもさんをもつあるお母さんは「夜中に発作を起こした時など、命にもかかわることなので、タクシーで病院に駆けつけます。今は医療費の心配はありません が、3才以上になったら医療費がかかるので本当に不安です。医療費の支給制度を一日も早く実施してほしい」と訴えています。
市が咋年実施した「少子化問題を考える市民意識詞査」でも、「医療サービスの充実」が44.1%、「経済的支援充実」が55%とあり、市民の切実な要望となっています。
児童福祉法の精神に基づき、児童の健全な育成と「子育て支援」の一環として、患者家庭の医療費負担の軽減を図るために、本条例を提案するものです。お手元 に配布した条例案をご検討いただきたいと思います。「少子化対策」は市の最重要課題でもあり、速やかに本条例が制定されますように、議員各位のご賛同をお 願い致しまして、提案理由の説明を終わります。